例年通り、12月に与党から令和8年度税制改正大綱が公表されました。今回の改正では、物価高への対応としての所得税減税や、相続税におけるタワーマンション節税対策に続く「貸付用不動産」の評価見直し、さらには暗号資産の申告分離課税導入など、実務に大きな影響を与える項目が多数盛り込まれています。
なお、例年は1月末に税制改正法律案が閣議決定・国会に提出されますが、今年は衆議院解散の影響により令和8年2月1日現在で法案は提出されていません。通常スケジュールであれば今後、3月末に税制改正法律案が成立・公布され、4月1日に法律が施行される予定です。
令和8年度税制改正大綱の主要項目(資産税)
| 税目 | 項目 | 概要 |
| 資産税 | 貸付用不動産の相続税評価額の見直し | 相続・贈与前5年以内に対価を得て取得・新築した貸付用不動産は、通常の取引価額(時価)が原則(80%評価可)。 【適用時期】令和9年1月1日以後の相続・贈与について適用 |
| 不動産小口化商品の評価見直し | 信託受益権等の不動産小口化商品について、取得時期を問わず通常の取引価額による評価へと見直す。 【適用時期】令和9年1月1日以後の相続・贈与について適用 |
|
| 事業承継税制の計画提出期限の延長 | 特例承継計画の提出期限を、法人版は令和9年9月末まで(1年6ヶ月延長)、個人版は令和10年9月末まで(2年6ヶ月延長)とする。 | |
| 教育資金の一括贈与非課税措置の終了 | 適用期限である令和8年3月31日をもって延長せず、廃止する。 |
資産税においてインパクトが大きかった項目は、貸付用不動産の評価見直しです。これまで相続税対策として一般的に行われてきた、購入直後の不動産評価減による節税スキームが厳しく制限されることになります。令和9年1月1日以後の相続等から適用されるため、現在対策を検討中の方は注意が必要です。
令和8年度税制改正大綱の主要項目(資産税以外)
| 税目 | 項目 | 概要 |
| 所得税 | 基礎控除・給与所得控除の引き上げ | 基礎控除の本則を58万円から62万円に引き上げ、さらに所得に応じて加算する特例を拡充。給与所得控除の最低保障額も最大74万円(R8・9年)へ引き上げる。基礎控除の特例である42万円への引き上げも含めていわゆる年収の壁は「178万円」まで引き上げられる。 【適用時期】令和8年分以後の所得税から適用 |
| 暗号資産への分離課税導入 | 一定の暗号資産の譲渡について、株式等と同様に約20%の申告分離課税を適用し、3年間の損失繰越控除を認める。 【適用時期】未定。金融商品取引法改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後 |
|
| 高所得者層への課税強化 | 特定の基準所得金額が1億6,500万円(現行3.3億円)を超える者に対し、税率を30%(現行22.5%)に引き上げる。本税制の対象者は、iDeCo、ふるさと納税、寄付金等の支出があっても所得控除のメリットを享受できないため留意が必要。 【適用時期】令和9年分以後の所得税から適用 |
|
| 法人税 | 特定生産性向上設備等投資促進税制の創設 | 大規模な設備投資に対し、即時償却または7%(建物等は4%)の税額控除を選択適用できる制度を創設。 【適用時期】改正産業競争力強化法の施行日から |
| 賃上げ促進税制の見直し | 大企業向けの措置を令和8年3月末で廃止。中堅企業向けも要件を厳格化した上で令和9年3月末に廃止する。 | |
| 企業グループ間取引の書類保存特例 | 無形資産や経営指導等のグループ間取引について、価格根拠や明細を記した補完書類の保存を義務化。不備がある場合は青色申告取消しの対象となる。 【適用時期】未定。 |
|
| 消費税 | インボイス経過措置(2割特例等)の延長・見直し | 個人事業主の2割特例を「3割特例」として2年延長。免税事業者からの仕入税額控除(8割控除等)も、控除率を70%にするなど段階的に見直した上で期限を2年延長する 【適用時期】3割特例:令和9年及び10年の各課税期間 |
今回の改正により、いわゆる「103万円の壁」は、「178万円の壁」へと大幅に引き上げられることになります(令和8・9年分)。ただし、住民税の基礎控除引き上げは実施されない点や、社会保険の壁の問題は依然として残る点に留意が必要です。
また、賃上げ促進税制が大企業向けから徐々に廃止されることが決定され、賃上げから設備投資への移行が垣間見える内容となりました。
その他の令和8年度税制改正大綱の項目
| 税目 | 項目 |
| 所得税 | NISAの拡充:18歳未満の口座開設(未成年者特定累積投資勘定)を創設。令和9年以後から適用。 |
| 青色申告特別控除の見直し:優良電子帳簿保存等の要件を満たせば75万円へ引き上げる一方、高収入(1,000万超)で簡易簿記の者は10万円控除の対象外とする。令和9年分以後の所得税から適用。 | |
| 通勤手当・食事支給の非課税枠引上げ:通勤手当の上限を66,400円、食事支給の非課税枠を月額7,500円へ引き上げ。 | |
| 法人税 | 研究開発税制の見直し:戦略技術領域(AI、半導体等)の控除率を40〜50%へ引き上げる一方、一般型の控除率カーブを厳格化。令和8年4月1日以後に取得する資産から適用。 |
| 中小企業者等の少額減価償却資産の特例:取得価額を40万円未満に引き上げ、対象法人を従業員400人以下へ縮小。 | |
| その他 | 防衛特別所得税の創設:所得税額に対し税率1%の新たな付加税を課す(令和9年分以後)。 |
| 固定資産税の免税点引上げ:家屋を30万円、償却資産を180万円にそれぞれ引き上げる。令和9年度以後の年度分の固定資産税から適用 |