資産税と令和5年度税制改正

 

令和4年12月16日に与党から令和5年度税制改正大綱が公表されました。今後、税制改正法律案が閣議決定・国会に提出され、3月末に税制改正法律案が成立・公布、4月1日に法律が施行される予定です。

 

令和5年度税制改正大綱の主要項目(資産税)

税目 項目 概要
資産税 相続時精算課税制度の見直し 相続時精算課税制度を選択後も、毎年110万円以下の贈与については贈与税申告が不要となる。
②災害による一定の被害を受けた土地建物(相続時精算課税制度適用土地建物)については、相続税の計算において評価額を再計算できる。
【適用時期】
①令和6年1月1日以後贈与に係る相続税又は贈与税について適用
②令和6年1月1日以後に生じる災害により被害を受ける場合について適用
相続税の計算上加算する生前贈与の期間延長 相続開始前に暦年課税贈与があった場合の相続財産に加算する生前贈与の期間を7年に延長する。延長した4年間に受けた贈与については、合計100万円まで相続財産に加算しない。
【適用時期】令和6年1月1日以後の贈与に係る相続税について適用
教育資金の一括贈与の非課税措置の見直し 下記変更を加えて令和8年3月31日まで3年間延長する。
①贈与者死亡時、相続税課税価格が5億円超の場合、受贈者が23歳未満であっても、教育資金の贈与残高を相続財産に加算する。
受贈者が30歳に達した場合等により契約終了した際、教育資金の贈与残高がある場合、残高の贈与税の計算上、一般税率を使用する。
【適用時期】令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税・贈与税について適用
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の見直し 下記変更を加えて令和7年3月31日まで2年間延長する。
受贈者が50歳に達した場合等により契約終了した際、結婚子育て資金の贈与残高がある場合、残高の贈与税の計算上、一般税率を使用する。
【適用時期】令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用
相続空き家譲渡に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例 相続空き家特例について下記変更
①一定の譲渡をした場合、譲渡日~翌年2月15日までの間に、耐震基準に適合すること又は全部取壊し等が行われた場合は特例を適用することができる。
相続人が3人以上の場合、特別控除額が2,000万円とする。
【適用時期】令和6年1月1日以後に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡から適用

 

資産税改正の留意点と今後について
令和5年度税制改正の目玉である相続時精算課税制度の改正の意図は、税制改正大綱の「令和5年度税制改正の基本的考え方等」から伺えます。

令和5年度税制改正大綱P16 一部抜粋

高齢化等に伴い、…若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。
一方、…高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば、格差の固定化につながりかねない。…
このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を促進する観点から、生前贈与でも相続でもニーズに即した資産移転が行われるよう、…資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築していく必要がある。

資産を早く若年世代に移行しつつ、格差拡大にならないように課税はしたい⇒贈与税と相続税の一体化に向けて相続時精算課税制度を使いやすくした。個人的にはこのような流れだと考えています。

今回の下記2つの改正により、今後の相続人への生前贈与は、暦年課税より相続時精算課税制度の方が主流になると言われています。(相続人以外であれば暦年課税のまま)

  1. 相続時精算課税を選択した場合、110万以下の生前贈与は相続財産に加算されない
  2. 一方、暦年課税を選択した場合、110万以下も含めて生前贈与が相続財産に加算される&その加算期間が7年に拡大

一定程度のキャッシュを相続人に生前贈与していくケースにおいて相続時精算課税制度を利用した方が有利となる場合が増えることは間違いありませんが、個人的には相続時精算課税制度の利用は慎重に検討すべきだと考えています。理由は、一度選択したら後戻りできないことと、贈与時の価額で固定されて相続財産に加算されること(贈与財産の価値が下がるケースを想定)は改正後も変わらないためです。また、シミュレーション次第ですが、キャッシュリッチな超富裕層であれば改正後であっても暦年課税の方が有利になるケースも考えられます。
さらに言うと、今回の改正が贈与税と相続税の一体化に向けた道半ばの改正だと捉えると、相続時精算税制度を選択した場合に110万以下は相続財産に加算されないという内容が今後さらに改正される可能性もあり得ます。

いずれにせよ、誰に贈与するのか?贈与者の年齢は何歳か?何を贈与するのか?いくら贈与するのか?等を考慮してタックスプランニングを検討する必要がある点は、改正前後で変わらないと言えます。また、暦年課税の加算期間が7年に拡大する影響は、実質令和6年1月1日以降の贈与からとなりますので、暦年課税による贈与の場合には今年中の検討が望まれます。

 

タワマン節税
話は変わりますが、今回の税制改正では見送られたタワマン節税について、税制改正大綱では下記のように述べられています。

令和5年度税制改正大綱P21 一部抜粋

マンションについては、市場での売買価格と通達に基づく相続税評価額とが大きく乖離しているケースが見られる。
…このため、相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。

タワマンの高層階と低層階の取引価格と税負担の不均衡については、平成29年度税制改正で固定資産税・都市計画税・不動産取得税に関しては補正率の創設により一定の解消がなされましたが、固定資産税評価額自体の改正ではなかったため、相続税の計算上は影響がありませんでした。しかし、近年の行き過ぎた相続税対策等の影響もあり、上記のように相続税に関しても課税の公平を図るため、通達の見直しが入ることが予想されます。

 

その他の令和5年度税制改正大綱の主要項目

税目

項目

所得税

 

 

 

 

新NISAの創設
スタートアップ再投資の非課税措置の創設
エンジェル税制の拡充要件緩和(対象企業の要件緩和、譲渡時優遇)
ストックオプション税制の拡充(権利行使期間10年→15年)
極めて高い水準の所得に対する負担の適正化
法人税

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗号資産の期末時価評価等の課税に係る見直し(一部時価評価対象外)
研究開発税制の見直し
スピンオフの実施の円滑化のための税制措置の拡充(適格株式分配)
DX投資促進税制の見直し及び延長
株式交付制度における所得計算の特例の見直し(同族親会社除外)
中小企業者等に対する軽減税率の延長
中小企業向け設備投資促進税制の見直し及び延長(コインランドリー除外)
先端設備等導入計画に基づく固定資産税減免制度の見直し
地域未来投資促進税制の拡充・延長
特定資産の買換えに係る期限延長と一部見直し
消費税

 

 

 

適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
中小事業者の少額取引に係る事務負担の軽減措置
返還インボイスの交付義務の見直し
適格請求書発行事業者登録制度の見直し
納税環境整備

 

電子帳簿保存制度の見直し
防衛費の財源確保のための税制措置