減資のメリット

 

減資する企業のニュースを相次いで見るようになりました。
JTBが資本金を約23億→1億、スカイマークが90億→1億、チムニーが約58億→1億、カッパ・クリエイトが98億→1億・・・、と運輸観光系や飲食系など状況の厳しい企業が資本金を減資、それも1億まで減少させるという傾向が続いています。

 

減資をする理由

減資によるメリットは、

  • 欠損てん補(決算書の見栄えを良くすることで融資を有利にする、取引先の信用悪化防止)
  • 配当金分配(剰余金がマイナスだと配当ができないため、資本金から剰余金に振替える)
  • 優遇税制(後述)

デメリットは、

  • 信用力低下(資本金額が信用力の担保と見られることや減資=業績不振と見られがち)
  • みなし配当(減資に際して株を売却した個人株主に対する税率が高くなる場合あり)
  • コスト(株主総会特別決議、債権者保護手続き、法務局への登記など手続きが煩雑)

といったあたりですが、減資によるメリット・デメリットは中小企業と大企業で意味合いが異なります。例えば、株主=役員となっているケースが多い中小企業の場合、剰余金がマイナスとなっている状況で配当を出すケースは限られますし、上場企業でみなし配当の税率を気にする場面も限定的です。

遡ること5年以上前に、シャープの資本金を約1,200億から1億に減らす計画がありました。減資をする理由は欠損てん補と優遇税制とされていましたが、中小企業を想定した優遇税制を大企業が意図的に活用する点について、政府が問題視する可能性が出たため、シャープは計画を断念し資本金を5億に減資しました。これは上場企業(有名企業)の社会的注目度が決断を左右したものと考えられ、中小企業では想定されない決断かと思います。

 

優遇税制

ここ1年の減資理由の大部分を占めているのが、優遇税制の活用と考えられます。5年前のシャープの時は半ば社会が許さなかった感もあったのかもしれませんが、今はそれほど悠長なことを言っている状況ではないので、少しでも資金繰りを改善させる方法はないかと模索する中で減資を決断した企業もあるのではないでしょうか。

資本金が1億円以下になると具体的には次のような優遇税制を受けることができます。

  • 法人税の軽減税率の適用(所得金額800万円まで軽減税率15%が適用)
  • 外形標準課税の減免(外形標準課税だと赤字でも資本割・付加価値割がかかる)
  • 青色欠損金の繰越控除において所得の100%控除が可能(資本金1億円超だと50%)
  • 特定同族会社の留保金課税の適用除外
  • 年間800万円まで全額交際費を損金算入可能(資本金1億円超だと接待交際費の50%まで)
  • 少額減価償却資産の全額損金算入
  • 一定の設備投資に対して特別償却(もしくは特別控除)可能

その他、各種補助金や助成金の対象となることや法人住民税の均等割が低くなることも大きなメリットになります。
留意するべき点として、上記の優遇税制は資本金が1億円以下であれば必ず適用できる訳ではなく、それぞれ中小法人または中小企業者が適用条件となっている場合があり確認が必要です。例えば、法人税の軽減税率・青色欠損金の繰越控除・特定同族会社の留保金課税の適用除外・全額交際費の損金算入は中小法人が適用条件であり、一定の設備投資に対する特別償却(もしくは税額控除)は中小企業者が適用条件です。

なお、中小法人と中小企業者の区別は下記の通りです。

中小法人 中小企業者
資本金1億円以下、
かつ、
大法人と完全支配関係にない※大法人は資本金5億円以上の法人
資本金1億円以下、
かつ、
同一の大規模法人に1/2以上・複数の大規模法人に2/3以上保有されていない※大規模法人は資本金1億円超の法人、
または、
大法人による完全支配関係がある法人